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とにかくゼロから離れたい【舞台 閃光ばなし】

今年2作目の舞台観劇。関ジャニ∞のメンバーだと横山さんの『マシーン日記』以来で、会場も同じロームシアターだった。安田さんの舞台は初めてで、どんな風に表現をするのか楽しみだった。今回はファンクラブ名義が落選してしまったので、諦めていたけど…なんと同僚(で、毎度お馴染み)のYちゃんが一般のチケットを取ってくれるとのこと!お互いに行ける日を擦り合わせてチケットを購入。後日公式サイトを観てみると、まさかの初日!(ファンクラブ名義で申し込んだ時の記憶が曖昧で、日程を覚えていなかった…) 舞台初日に観劇するのは初めてで「一般でチケット取れるものなのか…」と拍子抜けした。

当日はというと、前日が宿直だったので当日のお昼前まで働いていた。色々心配事はあったけど…なんとか無事に一旦自宅に戻って準備を。仮眠とれたらいいな〜なんて思っていたけど、意外と時間が無くてシャワーを浴びたり色々家事をしたりしていたらあっという間に出発の時間。コンサートと違って舞台だからか実感があまりわいていなくて、変にドキドキすることなく落ち着いた状態で会場へ。

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座席までの案内とかお手洗いの列の整備とか、ロームシアターのスタッフさんがかなりテキパキされていた印象。また、グッズ販売の所にいたスタッフさんも丁寧で気持ち良かった。

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今まで(と言っても両手で収まる程の数しか舞台は観て来ていないけれども)観て来た舞台の中で最もキャストの人数が多く、恐らく初めてお目にかかる方も多かったと思われる。今回の(安田さん以外の)出演者で私が以前から知っていたのは、黒木華さん、佐藤B作さん、そして片桐仁さんのお3人。黒木華さんは、実は子供の頃にあの関西では有名な『探偵!ナイトスクープ』に出演していたエピソードが印象的な女優さん。関西出身ということもあって応援していたし、優しいお顔つきで少し過去が舞台の作品にピッタリな方だと思っていたので、実際に生で見ることができて嬉しかった。片桐仁さんは『99.9』などテレビドラマの印象が強い。主演をいつも引き立てる名バイプレイヤーは、安田さんと黒木さんをどう引き立ててくれるのか…楽しみだった。そして佐藤B作さん!小さい頃にテレビで見ていた記憶が…何の番組かは覚えていないけど、確実に私の中では“テレビの人”。そんな方の演技を見れるなんて光栄だった。今回のお席は3階席だったので、かなり上の方からの観劇となった。お話が始まるまで舞台には大きな幕がかかっていたので、舞台と自分との距離感がイマイチ掴めずにいた。いざ、幕が開くと…思ったより人が小さいなと一瞬思ったけど、表情は肉眼でもわかったので安心した。

場所は東京葛飾。新中川という川に町を分断された人々が、町に抗議したり自分たちでなんとかしようとしたり…。昭和30年代の下町がということで、登場人物の出立ちは“ザ昭和”という表現がピッタリ。生活にも華やかさは無いし、お金も全然無いし、言動も下品だけど…それなりの生活はできていた人々。でも“プラスでもマイナスでもいい、ゼロから離れて生きていたい。”の言葉の通り、不便で刺激のないこの生活からどういう形であれ変化を求めている人々。その中に安田さん演じる佐竹是政と黒木さん演じる佐竹政子がいて、家族や近所の人を巻き込みながら佐藤さん演じる野田中に振り回されながら現状からの脱却を試みる。

佐竹是政は実家の自転車屋を継ぎながら、地域の為に尽くしてきた人物。少々勝手なところがありながらも、人情深く妹想いのお兄ちゃん。佐竹政子は自身が置かれた状況の中で自由に生きている妹。男勝りで、地域住民からは「昔は可愛かったのに」と言われながらも今でも地域のアイコンのような存在。旦那(片桐さん演じる柳)はいるけど、兄の是政との絆が断然強い。両親がいないこの兄妹は、自転車の修理工の加古さんと助け合いながら同じ場所で生きてきたが、そんな生活の場が奪われようとしていて…。地元の路線バスを運営しておりこの地域のドンである野田中は自分の身分を隠し、是政を持ち上げてバイクタクシーの会社*1を立ち上げさせる。そして途中で身分を明かし、是政やその周りの人を地獄に落としていく…。野田中は、自分が支配しているこの地域で反旗を翻す者にいち早く近づき、上手く掌に乗せて転がし、最後に裏切る。つまりは、自分に対抗してくる人間が怖い、自分の今の座を奪われるのが怖いということ。だから、地域をまとめるようなリーダー的存在が現れるとすぐに叩き潰す。是政の場合も会社を作らせて、自分は会社の経理担当として側にいる。常に相手のことを把握して、自分が操りやすいようにしているのだ。しかも、是政たちが住んでいる地域を野田中が買収し、住民たちに立ち退きを命じる。そして最後には、地元のバスに対抗している是政のバイクタクシーの会社が、裁判で区議会議員に訴えられる(絶対にバックに野田中がいる!)。2人乗りがダメだの、法定速度を無視しているだの、バイクタクシーは改造しているから安全性がどうだのと、色々文句をつけられる是政。裁判に出席した時の練習も皆でしたけど…この地域のドンを相手にした裁判、勝てるはずがない。終いには裁判から逃げ是政が政子とバイクで警察から逃げる。もう逃げ切れないと思ったのか、バイクに乗ったまま崖から落ちていく是政と政子……。2人は無事で、なんとバイクも無事だった。崖から落ちても壊れないバイクということで、安全性を主張できると再び裁判へ。果たして裁判はどうなったのか、2人をはじめ、地域住民はどうなったのか…。終わり方がとても曖昧で「で、どうなったの!?」と観劇した直後は少し混乱したけれど、これって舞台を観た人間がそれぞれの最後を想像して完結するのかなと。1回しか観劇していないので、セリフはもちろんストーリーの記憶も曖昧。あと1回くらいは観たかったなと思う舞台だった。

母親が出て行った後の父と是政、そして政子の3人で暮らしている回想のシーンで、母親と是政のやりとりが悲しかった。父親からの伝言を母親に伝えなかった是政。ずっと忘れていた過去だったのは、母親が本当に帰ってこなくなった原因が自分にあるんじゃないかと、もしかして思い出したくなかったから?基本的には地域住民とヤイヤイ言いながら生活するシーンが描かれているんだけど、こんな風に回想シーンや兄妹のシーンはしんみりすることが多くて。そして主演以外の人にもそれぞれ見せ場があって、特に白渡(由乃)さんと是政のボクシング対決(!?)が印象的だった。由緒正しきお寺のお嬢様である白渡さんをこうまでして突き動かすもの、それは…是政への恨み!過去に婚約をしていた2人だけど、結婚式に来なかった是政。来れなかったのには理由があるけど、その理由も理由だし…。白渡さんに少し同情しつつも、お金のことで是政とほ過去をめっちゃ気にしていることが判明するシーンはかなり笑った。

奥行きを活かしたセット。後ろのセットの前に幕を用意して、手前の空いたスペースで別のシーンが始まった。川を渡るシーンは、3階席から見ていた為色々丸見えだったけど、それはそれで面白い。プロジェクションマッピングで背景を変えたり、歌うシーンで歌詞が出たりするのもわかりやすくて良かった。パンフレットにも歌詞は載っていたけど、歌を聴くと同時に歌詞も見られたのでありがたい。

本日千秋楽のはずだったんだけど、関係者にコロナが出て中止に。未だに、いつ、誰がコロナになってもおかしくない状態だから、出演者の皆さんは毎公演後悔のないように全力で演じてこられたはず。そして観る側も「もしかしたら」という覚悟はあったはず。でも、最後の最後だから、演じる側も観る側も想いはひとしお。舞台は生物(なまもの)だからこそ、初日からの変化がある。更に良い作品を目指して変化していった『閃光ばなし』の集大成が観られなかった人がいるのは残念。だけどこのご時世、こんなことが起こりうるんだと肝に銘じるしかないか。

とにかく、千秋楽前日まで走り抜けた、安田さんをはじめとする演者の皆さん、スタッフの皆さん、お疲れ様でした。そしてコロナに罹患された関係者の方の回復をお祈りしています…。

*1:元々自転車屋なので、自転車の修理工の加古さんが自転車にエンジンをつけてくれた。新中川の向こう側へ行くにはバスが必要だけど、高い運賃。それに比べてバイクタクシーは速いし安いし、バスが通れない狭い道でも走ることができる!